繊細な人

2006年4月3日
繊細な彼
そして、そんな繊細な彼の顔色を見ながら
過ごす毎日
幸せなことも、笑いあうこともある
でも、時々思うことがある

そんな毎日の中
未だ途切れないあの人からのメール
他愛も無い日常を記したメール
それが、私の安定剤になったりする

私はもっと強くならなくちゃいけないんだろうか
このごろ、そんなことが分からなくなる

蓄積

2006年3月26日 恋愛
色々なことが心の中に蓄積されて
どうしようもなく悲しくなった
そして、眠れなくなってしまった

そんな時、ふと勇樹を想った

『今夜は○○の東横インに泊まり
明日の朝一で○○の仕事が入っちゃってね』

そんなメールが夕方勇樹から届いていたから…

電話をしようか?
メールをしようか?

迷ったけど、できなかった。
なけなしの誠実さで、そうしなかった。

苦しいときの逃げ場。
それを勇樹にしてはいけないね。
それだけは分かっているつもり。

明日は、元気に仕事ができますように…
頑張れ私!

アイロン

2006年3月25日 日常
予定の無い土曜日の午後
家でのんびりアイロンをかけた
日のあたるリビング
アイロンの蒸気

そして、彼が弾くピアノの音色

あまりに穏かで
あまりに幸せで
ちょっと怖くなった。

どうか、こんな穏かな幸せが続きますようにと
願わずにはいられない

はなきん

2006年3月24日 日常
今日は、華の金曜日
ハードな仕事もスムーズに進む
端からキレイに片付いていく
いつも、この気持ちとこのペースがあればなあ…

今日は夕方時間が出来たら美容院に行きたい
美容院に行くと感じることのできるあのリフレッシュ感
今の私にはそれが欠けている気がする

で、さっぱりした髪の毛で週末に突入!

さ、お昼返上で一気に仕事を片付けなくちゃ!!!
しばらくペースダウンしていた仕事が
一気にフル回転
ご飯を食べる時間も無く、
なんだかちょっぴりお疲れタイム

仕事も無いと困るし
でも、ありすぎて自分の生活を見失うのもいや

結局のところ、私は欲張りなんだ。

でも、その自分の欲求を満たす為に頑張る
仕事も頑張るし
プライベートも頑張る
遊びも頑張るし
サボるときだって頑張ってサボってみる

でもね、最近思うこと
頑張ることって、
努力することって
絶対に無駄にはならないなって。
彼との関係も、ずっと努力し続けて行けば
きっと大丈夫なんだよね。

さ、頑張れ頑張れ!

一歩

2006年3月20日 恋愛
昨日からタクヤとギクシャクしてしまっている
問題は二人の間にあるわけじゃなくて
私たちを取り巻く親戚関係の中にあって
でも、それが原因となって二人の間がしっくり来ない

今朝も、そっけないまま仕事に出て行ったタクヤ
でも、このままじゃ嫌だ
このまま放置しておいてモヤモヤし続けるのは嫌だ
だから、勇気を出してさっきメールを入れた

『このままの二人でいるのは悲しいよ』

そしたら、タクヤから電話がきた

「今日、午後、仕事の段取りがつくなら二人で話をしよう」

向き合って、話をして、理解して
そして、また一歩お互いが近づけたらいいな。

2006年3月16日 日常
今夜は満月?
それとも、昨日が満月だったのかな
いずれにせよ、とてもキレイな月明かり
こんな夜はちょっとぐらい眠れなくても、
明日がつらくても、
得をした気持ちになる

月あかりって、なんだか幸せな気持ちになる
ちょっと切なくて、ちょっと暖かくて。。。

会話って・・・

2006年3月15日
話をする、会話するって、とても大切なことだなあ。
過去の私は、気に入らなければムッツリしてた。
一人になって気分転換しようとしていた。

今日、めちゃくちゃ忙しい一日の中で、
ちょっと心が狭くなって、
ついつい、タクヤに多くを望もうとしてしまった。
それは、まったくの私のわがままで、
でも、すっきり割り切れるほど私に余裕が無くて
いつもより視線を合わせる回数も、会話も少なくなっていた。

いま、お風呂から上がって、
タクヤと向き合って、
そして些細で当たり前の会話をしたら、
なんだかすっきりと心が晴れてきた。
会話すること、
内容なんてなんでもいいから
向き合って、視線を合わせて、歩み寄る。
今までの私はあまりしてこなかったなあ。
でも、こうして日々のタクヤとの積み重ねで、
私は成長していけるかもしれないなって思った。
今日、タクヤと結婚したことを報告した
この3年間ずっと私を見てきてくれた男友達
友達で、仲間で、競争相手で、恋人未満の洋二。
そんな洋二に、ようやく報告できた。
仕事ついでのメールではなく、
きちんと顔を見て、自分の言葉で話したかったから、
今日までのびのびになってしまったけど
でも、きちんと話せたからよしとしよう。

笑顔で「おめでとう」っていってくれた洋二。
ありがとう。
本当は、これからの私と洋二のことが不安だった。
話したら、「タクヤ先輩に悪いから、もう二人で会うことも
仕事の相談も、気分転換のサボりも辞めよう」
そんな風に言われると思っていた。
こんな一匹狼の世界で、仕事仲間を失うのは怖い。
でも、それでも変わらない二人でこれからも頑張ろうって…
いつものちょっと照れた表情の洋二と向き合えた。

洋二、ありがとう。

思い出

2006年3月13日 恋愛
勇樹との思い出を処分しようと思った。
なかなか捨てられずにいた古い携帯電話。
機種変更の度に、勇樹とのメールのやり取りを失えずに、
何台も何台もコレクションしてきた。
でも、タクヤにすこしでも誠実でありたいから。
勇樹との日常を紡いだメールは捨てようと思う。

今日、古い機種を充電して、仕事の合間にメールを読んだ。
勇樹との些細なやり取り。
その合間に、時々タクヤとのメールも混じっていた。
あの頃は、今の私を想像できなかった。
勇樹と終わり無く続くものだと思っていた。
タクヤは、よき先輩として存在し続けるだけの人だと思っていた。
でも、思い出にすがろうと古いメールを処分できなかったのは、
勇樹とのやり取りを保管していたのは、
いつしか二人の関係が終わってしまうときのために、
儚い二人の形として取っておこうとしていたのかもしれないね。
何の約束も無い二人のたった一つの形だったのかもしれない。

何年か前からの携帯電話

こうして、一つ一つ誠実なタクヤに近づいて行けばいいよね。
タクヤ、こんな歩みの遅い私を許してね。

一人の

2006年3月12日 恋愛
久しぶりに彼と別々の夜を過ごす。
なんだか不思議な気分。
時には一人でのんびりしてみたいなんて思っていたのに、
いつも隣にいる人がいないのは寂しい。
去年の今頃は、勇樹に誕生日を祝ってもらっていて、
タクヤとはまだ、それほど踏み込んだ付き合いはしていなかったのに、
一年たった今は、タクヤが私の隣にいる人なんだ。

タクヤと勇樹の間で揺れた日々。
本当のところ、胸の中に消化しきれない思いはあるものの、
確実にタクヤと前を向いて歩いている私。

幸せな日々。
努力と、思いやりと、優しさで、こんなにも居心地のいい時間と空間が
作れるなんてね・・・。 

早く、仕事から帰ってこないかな。

さよならの物語

2006年3月7日 連載
さよならの物語
最終話

タクヤと手をつなぎ、タクヤの肩に頭を預け、飛行機の小さな窓から
外を見た。
いつも仰ぎ見る空より、少しだけ近いところにその青い色が広がっている。
眼下には、やはり青い色、澄み切った海がどこまでも続いている。

おととい、空港で私と勇樹の姿を見つけたタクヤは、
私への気持ちを整理しようと一人沖縄に向っていた。
『やはり、イブは彼を選んだのか』
そんな悲しみを乗り越えるために、一人で思い出のホテルに滞在していた。
そして、一日遅れで私の姿を見つけた。
タクヤは何も言わなかった。
何も聞かなかった。
ただ、ただ、そっと私を抱きしめてくれた。
夕焼けに染まるビーチで私達はお互いの瞳の中に自分を探し、
そして、あたりが暗くなるまで寄り添って波の音を聞いていた。

私は、これからこの人のことだけを見つめていく。
そんな思いと共に、飛行機は空港に到着した。

これからまた日常が始まる。
でも、今度は今までとは少しちがう。
タクヤが隣にいる。
少し高い位置にあるタクヤの横顔を見つめて、そっと微笑む。
空港のロビー。
たくさんの人が思い思いの方向に足を運んでいる。
と・・・。
駐車場へ向うエレベータの前に、一人待っている勇樹の後姿を見つけた。
彼の心の中を私が覗くことはもうできない。
いつもと同じようにまっすぐな背中からは、何も推察することはできない。
到着したエレベーターに乗り込んでいく勇樹の後姿を、タクヤの肩越しに見送る。
『ごめんね、勇樹。
 そして、本当にありがとう。』
エレベーターの扉が閉まる瞬間、勇樹がこっちを見た気がした。

私は・・・。

腰に回されたタクヤの手の温もりにそっと押されて、
私達の帰るべき方向へと足を踏み出した。

さよならの物語

2006年3月6日 連載
第30話

勇樹への決別の涙がようやく乾いてきたとき、すでに日が傾きはじめていた。
勇樹と二人で降り立った宮古島を、一人で飛び立ち、
そして、いつかタクヤと訪れた沖縄本島のホテルにたどり着いた。
季節外れのリゾートホテルは人もまばらで、予約無しに訪れた私も
すんなり部屋を取ることができた。
荷物をフロントに預けたまま、ビーチへとむかう。
すこしオレンジ色を帯びてきた空を見ながら、白い砂の上に腰を下ろす。

昨日は勇樹と共に聞いた波の音。
私が失ったものは、勇樹との未来。
そして、タクヤ…。
様々な思いが波のように心の中に打ち寄せる。
結局のところ、勇樹だけでなく、タクヤをも傷つけてしまった。
誰かを選ぶとか、誰と一緒にいるとか、それ以前に、私は誰とも何も約束ができなかった。
手のひらですくい上げた砂が、指の間からこぼれ落ちていく。
私の心の中からもこうして今までの思い出が流れ出て行ってしまうのかな。
私は、自分の心に静かに向き合う。

これからの時間をタクヤと過ごしたいと思っていた。
そのために、勇樹ときちんと「さよなら」をしなければと思った。
その勇樹への決別のために、タクヤも失ってしまうなんて本末転倒だよね。
でも、これが私の歩む道だったんだ。
「タクヤ・・・。タクヤは今何を考えているんだろう。
 もう、私のことを見てくれないことは分かっている。
 でも、最後に伝えたいな。
 ううん、伝えたかったな…。
 あなたとの未来を信じて最後のけじめをつけたこと。
 それが私の本当の気持ちだったってこと。  」
鮮やかなオレンジに染まった夕日と、海と、空。
そんな神秘的な空間に向って私は一言つぶやいた。
「タクヤ、あなたと一緒にこれからを過ごしたかったよ」
頬を伝う涙。
もう、これは勇樹を思う涙ではなく、タクヤへのもの。
砂の上に落ちた涙を見つめる私。
そして・・・。
「イブ・・・。」
私が落とした涙の上に、誰かの影が重なった。
私は静かに振り返る。
そこに彼がいた。
 
 

内緒の…

2006年2月28日
内緒の…
本当に、身近な人しか知らない出来事。
不思議な気持ち。
何も無かったかのように、月曜日からは日常に戻って、
普通に仕事して、普通に人と会って、メールして、話をして…。
でも、左指に真新しいプラチナリングが光っている。

本当は、話しておかなくちゃいけない人や、
話すべき人がたくさんいるけど。
でも、私も彼も何も変わらないから、あえて言う必要もないかな。
それに、
話したいけど、話す言葉が見つからないって言うのもある。
だけど、私は私。
仕事をしている外の私は、今までとは何も変わらない。

ゴメンねを言わなくちゃいけない人にも、
きちんと報告をしなくちゃいけない人にも、
今だけはまだ内緒でいさせて。

また、きちんと話をするよ。
『幸せだよ』って、ちゃんと報告するからね。

少しだけ

2006年2月21日 恋愛
落ち着きを取り戻した私の心
雨の夜、そしてその翌日は、
本当にせつなくてどうしたらいいか分からなかった。
でも、仕事して、家事をして、そんな日常をいくつか過ごしたら
また、いつもの私に戻ることが出来た。

戻る場所が分かっているのに、
こうして、戻るべきところへ戻ると安心するのに、
どうして、彼の元へ走ってしまったりするのかな。

今ひとつぱっとしない天気
午後は仕事を少し抜け出して、
気分転換にまつげパーマをかけに行こう。

雨の夜

2006年2月17日 恋愛
ちょっとした嘘と口実を作って出かけた二人の距離の真ん中にある街
久しぶりに会った彼は、いつもと変わらない優しい笑顔
さりげなく私の手をつないで
私たちを知っている人は誰もいない、見知らぬ街を寄り添って歩く

心の中の思いは、今も少しも変わらずに存在していて
切ない気持ちが抑えられない
もう、二度と会ってはいけない人なのに
そう分かっているのに、どうすることもできない
別れ際、駐車場の前でさりげないキスをしてきた彼のこと
このまま思い出に出来るわけがない

不誠実なことだと充分に理解しているけれど
でも、私はまた彼に会ってしまことをとめられない

ごめんね

さよならの物語

2006年2月10日 連載
第29話

勇樹、あなたの寝顔を前にさよならの手紙を書く決心をした私を許してください。
そして、なんの言葉もかけずに、ここから去る私を許してください。
いま、あなたの安らかな寝顔を最後の記憶にして、
私はあなたと刻んできた二人の時間を止めようと思います。
この、宮古島で時計の針を止めてしまおうと思います。
ここにたどり着くまで何度も迷い、立ち止まり、答えの出せない自分自身を責めて来ました。
それでもなかなか進むべき道が見えてこないまま、あなたも彼も巻き込んで
ここまできてしまった。
けれど、もう、これ以上はこのままではいられない。
そんな今この瞬間でさえ、あなたと一緒にいたいと思い、彼のことも大切にしたいと思う。
でも、それはどうやっても両立できない思いなんだね。
両立できないのならば、やはり何か諦めるしかない。

勇樹、本当にごめんなさい。
あなたと過ごした季節の思い出の数々は、思い出として心の中だけに
大切にしまっておきたいのです。
忘れる必要は無い、そう気がついた私だから、いつまでも大切に心の中に残しておきたい。
その上で私はこれから先、あなたではない人と歩いていこうと思います。
そのために、あなたと最後にこの島へ来たかった。
ううん、ここへ来なくてはさよならをすることができなかったの。
いつかあなたが一緒に住もうと言ってくれたこの島をあなたと二人で訪れることで、
ようやく私は次の一歩を踏み出せるようなきがしていたの。

ねえ、勇樹。
あなたと二人、同じ季節に同じものをこの瞳に映すことができて本当によかった。
今はなにもかもが、ただ愛しい思い出ばかりです。
さよならをしても、離れていても、同じ仕事をしている以上、
また、どこかでばったり会う日が来るかもしれないね。
そんな偶然を楽しみにしながら、お互い生まれ育った街で頑張りましょう。
それでは、その日が来るまでの間、しばらくさよならですね。
くれぐれも、体には気をつけてください。
お元気で・・・。

イブ

さよならの物語

2006年1月16日 連載
第28話

宮古島の白い砂、青い海、穏やかな時間と咲き乱れる花。
勇樹に手を引かれて向ったのは、それらの美しい景色が一望できる場所。
海風に拭かれながら広がる髪をおさえた。
「ここだよ、イブ」
静かに微笑む彼の顔がまっすぐみれない。
私は、勇樹の笑顔の向こうに、タクヤを思い浮かべていた。

タクヤは今頃どうしているのかな。
一人、飛行機の乗って、この隣にある沖縄本島へ向っているのだろうか。
それとも、空港から引き返して、帰っていったのか。
雲ひとつない空に、肩を落とすタクヤの後姿を描く。

「イブ?」
勇樹が私の顔を覗き込み、そして、そっと抱き寄せる。
「イブの今の心の中が複雑なことは分かっている。
 でも、もう悩まないで、何も考えないで俺に寄り添って欲しい。」
「勇樹・・・。」
勇樹の声を胸で聞きながら静かに目を閉じて、体を預ける。
この人のぬくもりが私を救ってくれた。
勇樹が、ここまでの私を支えてくれた。
勇樹の優しさを知ったから、私は笑顔で頑張ってこられたんだ。
この手が、私の涙をぬぐって、私を引っ張って、今この私の立っているところへ導いてきた。
今朝、一人で空港についたときの私は、まだ、行き先が分かっていなかった。
ううん、迷っていた。
心の中の様々な想いを振り切れず、どちらかとはもう二度と会わないんだという
決心が付けられずにいた。
宮古行きへ乗るのか、那覇行きへ乗るのか、最後の決断を勇樹に任せてしまった。
でも、それが答え?
これが、私の進むべき道?
今ここに、私と勇樹が向かい合っている、それが現実なのね。

「勇樹。」
そっと勇樹から離れて、その暖かな手を取る。
「いいところだね。この海と空があればいつでも笑っていられそう」
「イブ。いつか、ここに二人の別荘を作ろう。そして、二人で穏やかに時間をつなごう」
幾分傾いてきた太陽に照らされた二人の影が、ぴたりと寄り添っていた。

その後、宮古島のホテルのレストランでワインをあけた。
この何年かの間、勇樹と一緒に食事をしてきた。
叶わない夢だと思いながら、こんな日が続けばいいのにと願わずにはいられなかった。
勇樹の奥さんを恨んだりしたことは一度もなかったけれど、
いつも彼といられて羨ましいと、心から羨ましいと思っていた。
そんな手に入らないはずの幸せな時間が、今、私の目の前にある。
私の求めていたもの、求めていた人。
忘れようとしても忘れられなかったひと。
諦めようとしても諦められなかった人。

そして、その夜。
先に眠りについた勇樹の顔を眺めながら、私は長い長い手紙を書いた。

さよならの物語

2006年1月12日 連載
第27話

泣かない。
泣いてはいけない。
泣いてもどうにもならない・・・。
鼻の奥がジンとして熱くなるのを必死に抑える。
空港のロビーの天井を見上げる。
勇樹が待つ便は30分後。タクヤが待つ便は1時間後。
もう、時間はない。
そして、多分、私の中での答えは空港に来る前に出ている。
二つの手紙を綺麗にたたんで、再び鞄の中へ戻す。
ここで決めたことは、決して後悔しないようにしよう。
誰を選ぶとか、誰と別れるとかではなく、ただ私の心ままに進んでいこう。

そのとき、エスカレーターを上がってくる一人の男性の姿が見えた。
一緒に飛び立とうとしている彼の姿。
私は、一つ深呼吸をして立ち上がる。
そして、彼の視界に入るのを背筋を伸ばしてじっと待つ。
心なしか険しい顔をして歩いてきた彼が、私を見つけて、柔らかな笑顔になった。
大好きな笑顔。
その笑顔は、私が始めて彼を見た、新人研修のときの笑顔だった。
「勇樹、おはよう!」
「イブ・・・、会いたかった」
勇樹に強く抱きしめられ、手に持っていた2枚のチケットのうち、
タクヤから送られてきた那覇行きのチケットがイスの下へ落ちた。
そして、私はそれに気がつかないまま勇気の胸の中で目を閉じた。

さよならの物語

2006年1月10日 連載
第26話

イブへ

イブと付き合い始めてからの日々は、信じられないくらい幸せだった。
付き合い始める前、「私は不倫をしているんだ」と、聞かされ、そんな傷ついた笑顔でいるイブを僕が救ってあげるんだと心に決めていた。
僕が、その彼を忘れさせて、心の傷を治してあげるんだと誓った。

僕といて、イブは幸せじゃなかったの?
イブの僕に見せた無邪気な笑顔は、ウソではないと信じたいのに・・・。
イブから、泣きながら告白された「彼とまだ別れていない」の言葉が、どうしてか僕には飲み込めないんだ。
本当に、このまま、二人で穏かな日々を過ごしていけると思っていたから。
でも、この手紙を書きながら色々考えていたときに、その彼には僕には無い大人な一面があるんだろうな、と理解できた。
だから、イブも、その彼も、僕自身も誰も悪くは無い。
だって、僕といたとき「幸せだと」言ってくれた言葉にウソはないでしょ?
彼といるときにどうだったのかは分からないが、でも、僕といるときのイブは幸せだったんだろう、そう信じたい。
イブ、これからのことを考えよう。
二人のこれからのことを一緒に話そう。
もう、彼のことは忘れて、僕だけと歩いていこう。
でも、もし、イブが彼を忘れられない、彼を失うことができないというのだったら、僕にはどうすることもできない。
そのときは、もう、僕はイブには会いたくない。
会っても、イブを傷つけてしまうだけだから。
イブに出会わなければ良かった、そんな風には思いたくないが、でも結果そうなってしまうかもしれないね。
でも、心配しなくていいよ。
イブと別れたら、僕が君の前からいなくなるから。
前から言っていたように、僕はあの街を出るよ。

今この手紙を書いていて、僕は、彼に勝てないのかもしれないという嫌な予感がする。
認めたくないそんな想いばかりが僕の胸の中を渦巻いている。
でも、わずかな望みは持ち続けたい、信じたいんだ。
二人をもう一度やり直すために、いや、このまま続けて行く為に海を見に行かないか。
あの、二人で行った沖縄の海に行こう。
そして、あの海の見えるチャペルからもう一度二人をはじめよう。
そんな願いを込めて、空港で、待っているよ。

追伸
もしかしたらこれが最後になるのかもしれないね。
イブ、僕は本当にイブが大好きだった。
どこにいても、その思いは消せないかも知れない。
そんな風に思える人に出会えて僕は幸せだった。
ありがとう。さようなら。  

タクヤ

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