第30話
勇樹への決別の涙がようやく乾いてきたとき、すでに日が傾きはじめていた。
勇樹と二人で降り立った宮古島を、一人で飛び立ち、
そして、いつかタクヤと訪れた沖縄本島のホテルにたどり着いた。
季節外れのリゾートホテルは人もまばらで、予約無しに訪れた私も
すんなり部屋を取ることができた。
荷物をフロントに預けたまま、ビーチへとむかう。
すこしオレンジ色を帯びてきた空を見ながら、白い砂の上に腰を下ろす。
昨日は勇樹と共に聞いた波の音。
私が失ったものは、勇樹との未来。
そして、タクヤ…。
様々な思いが波のように心の中に打ち寄せる。
結局のところ、勇樹だけでなく、タクヤをも傷つけてしまった。
誰かを選ぶとか、誰と一緒にいるとか、それ以前に、私は誰とも何も約束ができなかった。
手のひらですくい上げた砂が、指の間からこぼれ落ちていく。
私の心の中からもこうして今までの思い出が流れ出て行ってしまうのかな。
私は、自分の心に静かに向き合う。
これからの時間をタクヤと過ごしたいと思っていた。
そのために、勇樹ときちんと「さよなら」をしなければと思った。
その勇樹への決別のために、タクヤも失ってしまうなんて本末転倒だよね。
でも、これが私の歩む道だったんだ。
「タクヤ・・・。タクヤは今何を考えているんだろう。
もう、私のことを見てくれないことは分かっている。
でも、最後に伝えたいな。
ううん、伝えたかったな…。
あなたとの未来を信じて最後のけじめをつけたこと。
それが私の本当の気持ちだったってこと。 」
鮮やかなオレンジに染まった夕日と、海と、空。
そんな神秘的な空間に向って私は一言つぶやいた。
「タクヤ、あなたと一緒にこれからを過ごしたかったよ」
頬を伝う涙。
もう、これは勇樹を思う涙ではなく、タクヤへのもの。
砂の上に落ちた涙を見つめる私。
そして・・・。
「イブ・・・。」
私が落とした涙の上に、誰かの影が重なった。
私は静かに振り返る。
そこに彼がいた。
勇樹への決別の涙がようやく乾いてきたとき、すでに日が傾きはじめていた。
勇樹と二人で降り立った宮古島を、一人で飛び立ち、
そして、いつかタクヤと訪れた沖縄本島のホテルにたどり着いた。
季節外れのリゾートホテルは人もまばらで、予約無しに訪れた私も
すんなり部屋を取ることができた。
荷物をフロントに預けたまま、ビーチへとむかう。
すこしオレンジ色を帯びてきた空を見ながら、白い砂の上に腰を下ろす。
昨日は勇樹と共に聞いた波の音。
私が失ったものは、勇樹との未来。
そして、タクヤ…。
様々な思いが波のように心の中に打ち寄せる。
結局のところ、勇樹だけでなく、タクヤをも傷つけてしまった。
誰かを選ぶとか、誰と一緒にいるとか、それ以前に、私は誰とも何も約束ができなかった。
手のひらですくい上げた砂が、指の間からこぼれ落ちていく。
私の心の中からもこうして今までの思い出が流れ出て行ってしまうのかな。
私は、自分の心に静かに向き合う。
これからの時間をタクヤと過ごしたいと思っていた。
そのために、勇樹ときちんと「さよなら」をしなければと思った。
その勇樹への決別のために、タクヤも失ってしまうなんて本末転倒だよね。
でも、これが私の歩む道だったんだ。
「タクヤ・・・。タクヤは今何を考えているんだろう。
もう、私のことを見てくれないことは分かっている。
でも、最後に伝えたいな。
ううん、伝えたかったな…。
あなたとの未来を信じて最後のけじめをつけたこと。
それが私の本当の気持ちだったってこと。 」
鮮やかなオレンジに染まった夕日と、海と、空。
そんな神秘的な空間に向って私は一言つぶやいた。
「タクヤ、あなたと一緒にこれからを過ごしたかったよ」
頬を伝う涙。
もう、これは勇樹を思う涙ではなく、タクヤへのもの。
砂の上に落ちた涙を見つめる私。
そして・・・。
「イブ・・・。」
私が落とした涙の上に、誰かの影が重なった。
私は静かに振り返る。
そこに彼がいた。
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