さよならの物語

2006年2月10日 連載
第29話

勇樹、あなたの寝顔を前にさよならの手紙を書く決心をした私を許してください。
そして、なんの言葉もかけずに、ここから去る私を許してください。
いま、あなたの安らかな寝顔を最後の記憶にして、
私はあなたと刻んできた二人の時間を止めようと思います。
この、宮古島で時計の針を止めてしまおうと思います。
ここにたどり着くまで何度も迷い、立ち止まり、答えの出せない自分自身を責めて来ました。
それでもなかなか進むべき道が見えてこないまま、あなたも彼も巻き込んで
ここまできてしまった。
けれど、もう、これ以上はこのままではいられない。
そんな今この瞬間でさえ、あなたと一緒にいたいと思い、彼のことも大切にしたいと思う。
でも、それはどうやっても両立できない思いなんだね。
両立できないのならば、やはり何か諦めるしかない。

勇樹、本当にごめんなさい。
あなたと過ごした季節の思い出の数々は、思い出として心の中だけに
大切にしまっておきたいのです。
忘れる必要は無い、そう気がついた私だから、いつまでも大切に心の中に残しておきたい。
その上で私はこれから先、あなたではない人と歩いていこうと思います。
そのために、あなたと最後にこの島へ来たかった。
ううん、ここへ来なくてはさよならをすることができなかったの。
いつかあなたが一緒に住もうと言ってくれたこの島をあなたと二人で訪れることで、
ようやく私は次の一歩を踏み出せるようなきがしていたの。

ねえ、勇樹。
あなたと二人、同じ季節に同じものをこの瞳に映すことができて本当によかった。
今はなにもかもが、ただ愛しい思い出ばかりです。
さよならをしても、離れていても、同じ仕事をしている以上、
また、どこかでばったり会う日が来るかもしれないね。
そんな偶然を楽しみにしながら、お互い生まれ育った街で頑張りましょう。
それでは、その日が来るまでの間、しばらくさよならですね。
くれぐれも、体には気をつけてください。
お元気で・・・。

イブ

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