さよならの物語

2006年1月10日 連載
第26話

イブへ

イブと付き合い始めてからの日々は、信じられないくらい幸せだった。
付き合い始める前、「私は不倫をしているんだ」と、聞かされ、そんな傷ついた笑顔でいるイブを僕が救ってあげるんだと心に決めていた。
僕が、その彼を忘れさせて、心の傷を治してあげるんだと誓った。

僕といて、イブは幸せじゃなかったの?
イブの僕に見せた無邪気な笑顔は、ウソではないと信じたいのに・・・。
イブから、泣きながら告白された「彼とまだ別れていない」の言葉が、どうしてか僕には飲み込めないんだ。
本当に、このまま、二人で穏かな日々を過ごしていけると思っていたから。
でも、この手紙を書きながら色々考えていたときに、その彼には僕には無い大人な一面があるんだろうな、と理解できた。
だから、イブも、その彼も、僕自身も誰も悪くは無い。
だって、僕といたとき「幸せだと」言ってくれた言葉にウソはないでしょ?
彼といるときにどうだったのかは分からないが、でも、僕といるときのイブは幸せだったんだろう、そう信じたい。
イブ、これからのことを考えよう。
二人のこれからのことを一緒に話そう。
もう、彼のことは忘れて、僕だけと歩いていこう。
でも、もし、イブが彼を忘れられない、彼を失うことができないというのだったら、僕にはどうすることもできない。
そのときは、もう、僕はイブには会いたくない。
会っても、イブを傷つけてしまうだけだから。
イブに出会わなければ良かった、そんな風には思いたくないが、でも結果そうなってしまうかもしれないね。
でも、心配しなくていいよ。
イブと別れたら、僕が君の前からいなくなるから。
前から言っていたように、僕はあの街を出るよ。

今この手紙を書いていて、僕は、彼に勝てないのかもしれないという嫌な予感がする。
認めたくないそんな想いばかりが僕の胸の中を渦巻いている。
でも、わずかな望みは持ち続けたい、信じたいんだ。
二人をもう一度やり直すために、いや、このまま続けて行く為に海を見に行かないか。
あの、二人で行った沖縄の海に行こう。
そして、あの海の見えるチャペルからもう一度二人をはじめよう。
そんな願いを込めて、空港で、待っているよ。

追伸
もしかしたらこれが最後になるのかもしれないね。
イブ、僕は本当にイブが大好きだった。
どこにいても、その思いは消せないかも知れない。
そんな風に思える人に出会えて僕は幸せだった。
ありがとう。さようなら。  

タクヤ

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