第25話
二人から逃げるようにして、連絡を取らなくなって2週間。
結局、私は気持ちを振り切ることも、割り切ることも、何か考えることもできず
暗闇の中を過ごす毎日だった。
そんなある日、私の元へ2通の手紙が届いた。
そして、その手紙を幾度も読み返した数日後、私は、空港の出発ロビーにいた。
たくさんの人が行きかうのをただ意味も無く見つめながら、立ち尽くしていた。
ビジネスマン、家族連れ、老夫婦、OLらしき人。
みんなそれぞれの目的があって、それぞれの場所へ向って飛び立とうとしている。
私は、今の私には、何があるんだろう。
私はどこへ向えばいいのだろう。
手にした2枚のチケットをじっと見つめる。
1通は勇樹からのもの。
そして、もう1通はタクヤからのもの。
もう、私はこのまま逃げ続けるわけにはいかない。
「どちらも選べない」、それもすらも単なる逃げでしかないことが分かった。
今、私はここで決めなければいけないんだ。
どちらかを選べば、確実にどちらかとの永遠の別れが来る。
今、その決断を・・・。
私は、目の前にあいたイスに腰掛けて、鞄から2通の手紙をだした。
イブへ
イブと過ごしてきた時間が、今、とても愛しいものに思える。
今まで、当たり前のように二人での思い出を積み重ねていけると思っていた僕は、
イブから「もう一人大切な人がいる」と聞かされて、一瞬頭を殴られたような感覚になった。
俺は、イブに甘えていたんだね。
いつまでも、こんな俺を許して、ずっと俺を待っている君しか想像していなかったから。
でも、そうだよね。
君だって、きっと確かな何かが欲しかったはず。
だから、俺と付き合いを重ねる一方で、他の人とも時を重ねてきたことを責めたり、
「なぜ」と問いただしたりするつもりはない。
当然のことだ、と今冷静になると分かるから・・・。
俺の、本当の気持ちを今、君に伝えようと思う。
月に一度の君との約束だけを心の支えにしてきた。
既に巣立ってしまった子供と、すっかり別々の人生を歩き出してしまった妻との形だけの家族。
それでも、それが家族である限り、そこへ帰らなければいけないと頑張ってきた。
それは、本当に辛いことだった。
特に、君と会った後は、なぜ俺の帰る場所があの無機質な家なのかと悔しくて、車の中で何度も唇をかんだ。
俺を責めることも無く、いつも寂しそうな、でも、笑顔で去ってゆく君の後姿を見るにつけ、涙がにじんだ。
俺が、この家族から決別しようと思ったのは、君だけのせいではない。
それだけは、分かってくれ。
ただ、君がくれた暖かさが、僕の背中を押してくれたことは間違いない。
子供は何もいわなかった。
妻は、あっさりした顔で、「お互い幸せになりましょう」と一言だけ言った。
だから、大丈夫。
君は、何も壊していないんだ。
君が心配していた、人の家族を壊すことだけはしたくない、というその言葉は未だに守られているんだよ。
だから、安心して俺のところへ飛び込んできてくれないか?
君は、冗談だと思っていたんだろうけど、君と付き合い始めたとき、宮古島に土地を買ったんだ。
君との未来を夢見て購入したんだ。
君は、そのときは冗談だと思って、笑ってかわしてくれちゃったけどね。
その土地を見に、一緒に宮古島へ旅行に行かないか?
そして、これからの俺達のことを話そう。
君が一度だけつぶやいた、「アナタとは未来の夢をみられないから」という言葉を
海に返上しに行こう。
これからは、何も気にせず、誰に遠慮することも無く、未来を夢見ていいんだ。
いや、二人で未来を描きたいんだ。
最後になって、こんなことをいって君をつなぎとめようとする俺は何てずるいんだろう。
でも、君のすぐ近くに住む彼に、君を連れ去られるのは耐えられない。
ぐずぐずしていた俺が全部悪いけど。
仕事や、遠距離を理由に、君に寂しい思いをさせ続けてきた俺が悪いけど。
でも、君のその笑顔を俺に守らせて欲しい。
これからは、ずっとそばにいるから。
飛行機のチケットを同封します。
君が来てくれると信じて。
しつこいようだけど、これからはずっと一緒に生きていこう。
勇樹
二人から逃げるようにして、連絡を取らなくなって2週間。
結局、私は気持ちを振り切ることも、割り切ることも、何か考えることもできず
暗闇の中を過ごす毎日だった。
そんなある日、私の元へ2通の手紙が届いた。
そして、その手紙を幾度も読み返した数日後、私は、空港の出発ロビーにいた。
たくさんの人が行きかうのをただ意味も無く見つめながら、立ち尽くしていた。
ビジネスマン、家族連れ、老夫婦、OLらしき人。
みんなそれぞれの目的があって、それぞれの場所へ向って飛び立とうとしている。
私は、今の私には、何があるんだろう。
私はどこへ向えばいいのだろう。
手にした2枚のチケットをじっと見つめる。
1通は勇樹からのもの。
そして、もう1通はタクヤからのもの。
もう、私はこのまま逃げ続けるわけにはいかない。
「どちらも選べない」、それもすらも単なる逃げでしかないことが分かった。
今、私はここで決めなければいけないんだ。
どちらかを選べば、確実にどちらかとの永遠の別れが来る。
今、その決断を・・・。
私は、目の前にあいたイスに腰掛けて、鞄から2通の手紙をだした。
イブへ
イブと過ごしてきた時間が、今、とても愛しいものに思える。
今まで、当たり前のように二人での思い出を積み重ねていけると思っていた僕は、
イブから「もう一人大切な人がいる」と聞かされて、一瞬頭を殴られたような感覚になった。
俺は、イブに甘えていたんだね。
いつまでも、こんな俺を許して、ずっと俺を待っている君しか想像していなかったから。
でも、そうだよね。
君だって、きっと確かな何かが欲しかったはず。
だから、俺と付き合いを重ねる一方で、他の人とも時を重ねてきたことを責めたり、
「なぜ」と問いただしたりするつもりはない。
当然のことだ、と今冷静になると分かるから・・・。
俺の、本当の気持ちを今、君に伝えようと思う。
月に一度の君との約束だけを心の支えにしてきた。
既に巣立ってしまった子供と、すっかり別々の人生を歩き出してしまった妻との形だけの家族。
それでも、それが家族である限り、そこへ帰らなければいけないと頑張ってきた。
それは、本当に辛いことだった。
特に、君と会った後は、なぜ俺の帰る場所があの無機質な家なのかと悔しくて、車の中で何度も唇をかんだ。
俺を責めることも無く、いつも寂しそうな、でも、笑顔で去ってゆく君の後姿を見るにつけ、涙がにじんだ。
俺が、この家族から決別しようと思ったのは、君だけのせいではない。
それだけは、分かってくれ。
ただ、君がくれた暖かさが、僕の背中を押してくれたことは間違いない。
子供は何もいわなかった。
妻は、あっさりした顔で、「お互い幸せになりましょう」と一言だけ言った。
だから、大丈夫。
君は、何も壊していないんだ。
君が心配していた、人の家族を壊すことだけはしたくない、というその言葉は未だに守られているんだよ。
だから、安心して俺のところへ飛び込んできてくれないか?
君は、冗談だと思っていたんだろうけど、君と付き合い始めたとき、宮古島に土地を買ったんだ。
君との未来を夢見て購入したんだ。
君は、そのときは冗談だと思って、笑ってかわしてくれちゃったけどね。
その土地を見に、一緒に宮古島へ旅行に行かないか?
そして、これからの俺達のことを話そう。
君が一度だけつぶやいた、「アナタとは未来の夢をみられないから」という言葉を
海に返上しに行こう。
これからは、何も気にせず、誰に遠慮することも無く、未来を夢見ていいんだ。
いや、二人で未来を描きたいんだ。
最後になって、こんなことをいって君をつなぎとめようとする俺は何てずるいんだろう。
でも、君のすぐ近くに住む彼に、君を連れ去られるのは耐えられない。
ぐずぐずしていた俺が全部悪いけど。
仕事や、遠距離を理由に、君に寂しい思いをさせ続けてきた俺が悪いけど。
でも、君のその笑顔を俺に守らせて欲しい。
これからは、ずっとそばにいるから。
飛行機のチケットを同封します。
君が来てくれると信じて。
しつこいようだけど、これからはずっと一緒に生きていこう。
勇樹
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